堺包丁を使ったことがない人にこそ手にしてほしい
ダイキチが手がける最高レベルブランド「堺一文字吉國」の新商品「流清 燦藍(りゅうせい さんあい)」。刃に最高級ステンレスと名高いAUS10(アウステン)を採用した、手入れが楽で一般の家庭でも使いやすい1丁です。さらに波紋模様が美しいダマスカスを施すことで、錆びにくく耐久性が高いうえ、さらに切れ味のよい仕上がりに。
包丁の背(みね)や、アゴ(刃の一番ハンドル寄りの角の部分)の角をとる「マチ磨き」も施しているので、どんな握り方でもしっくり手に馴染みます。一点一点手作業で刻まれる「堺一文字吉國」の文字は、上品なプレミアム感を添えています。
ハンドルには、1年間じっくり乾燥させたカシの木を使用。これに藍染を施すことで「日本の心」を表現しました。商品名の「燦藍」は藍の色の一種です。深く美しい青が全体をきりっと引き締め、使うほどに味がでる経年変化もお楽しみいただけます。藍染には抗菌効果もあるのというのも嬉しいポイントです。
使い手を選ばない商品なので、堺包丁を使ったことがないという人も、ぜひ気軽に手にとっていただきたいです。きっとさらに料理が楽しくなるはず。高級感のあるパッケージなので贈り物にも最適です。
切れ味をとことん追求した逸品
1)国内外で人気を博しているダマスカス鋼と気品あるハンドルの組み合わせで日々の料理が楽しくなるスタイリッシュな包丁を作りました。
2)刀身にはプロの料理人が愛用する錆びにくく最上級ステンレス鋼のAUS10素材を採用し、職人歴50年の熟練職人の刃付けによる最上級の切れ味で日々のお料理が楽しく美味しくなります。
3)ハンドルに国産の木材では一番硬いと言われる白樫材を採用。表面には耐水性、防腐性に優れる漆塗りを施し、刀身、ハンドルともに見た目の美しさをとことん追求しました。
株式会社ダイキチ
分業制によって高品質を維持してきた堺包丁
600年あまりの伝統をもつ堺の包丁の製造工程は、大きく「鍛造」「研ぎ(刃付け)」「柄付け」の3つに分かれます。
「鍛造」とは、読んで字のごとく「金属を鍛えて造ること」。叩くほど刃の強度としなやかさが増します。鍛治職人が、燃え盛る炎の中で材料を真っ赤に熱し、金槌や動力ハンマーで叩き延ばす様子は圧巻です。
「研ぎ(刃付け)」は研ぎ職人によって刃研ぎや研磨を施すことで、包丁に鋭利な刃を付けていきます。まずは、刃の表面を荒い砥石で研ぎ、刃先の厚みを落とし形を整える「荒研ぎ」。その後、平らな面を研ぎ進めて刃先を研ぎ上げる「本研ぎ」へと続きます。
そして、最後は「柄付け」です。刃付け職人の手で鋭く研ぎ上げられた刃に、柄を付ける最終工程。発注元の卸問屋で行われます。
堺包丁は、伝統的に分業体制によって各工程をそれぞれのプロが手がけているのが特徴です。各職人が技術を高度に磨き上げることで、他産地の追随を許さない最高品質を維持しています。
刃に命を吹き込む銘切りの技
1962年(昭和37年)創業のダイキチは、堺刃物の製造卸、各種刃物、厨房用品などを取り扱う卸問屋。2代目の代表である原田隆行さんと、専務を務める弟の原田博次さんの兄弟で、堺刃物の魅力を伝えています。2人の父親である先代は卸売業のみを行っていましたが、代替わりのタイミングで、柄付けやそれ以外の工程も手がけるようになったといいます。
まずは、隆行さんによる「銘切り」。これは刃にブランド名を刻む工程です。金槌と鏨(たがね)を使い、小気味よく打ち込んでいく様子を眺めていると、簡単にこなしているように見えますが、細い文字をバランスよく刻むのは熟練の経験とセンスが不可欠です。
「刃に刻まれたブランド名は、使い手が常に目にする“包丁の顔”ともいえるもの。銘切りのかっこよさで、商品の価値が決まるといっても過言ではないと思うので、最後に命を吹き込む気持ちで刻んでいます。機械の銘切りもありますが、手作業で入れたものは輝きと存在感が違いますよね」(隆行さん)
そう話しながら手元では、今回堺キッチンセレクションに選出されたブランド「堺一文字吉國」の文字がするすると刻まれていきます。
使い心地を左右する最後の磨き作業
続いて、博次さんが研ぎ場へ。包丁の背や、アゴ(刃の一番ハンドル寄りの角の部分)の角をとる「マチ磨き」を施します。
「上級クラスの包丁にしかない工程です。このひと手間があることで、手への当たりがソフトになり、楽に長く包丁を握っていられるようになります。普段あまり意識しない部分ですが、この加工があるとないとでは使い心地が大違いなんですよ」(博次さん)
このほか、2段刃にすることで刃先を強化し切れ味を持続させる「小刃付け」や、包丁の裏側に1?1.5㎜ほど刃を付けることで素材の身離れをよくする「裏押し」などの工程も、博次さんの担当です。
「思い通りの研ぎができるよう、砥石をつくることから自分でやっています。最後の仕上げなので緊張感のある作業ですが、お客様に『よく切れる』と言っていただけるのが一番嬉しいですね」(博次さん)
兄弟二人三脚で生み出される人情味あふれる一品
最終工程は、博次さんによる「柄付け」です。中子(柄に差し込む刃先)を十分に熱した後、柄に差し込み、柄の底を木槌で叩くと刃が少しずつ柄の中に入っていきます。刃を歪みなく垂直に差し、重心のバランスを整えるのが職人の腕の見せどころ。
「完成品を手にとったとき、刃で最もよく使う部分(スイートスポット)に感覚がいくように仕上げます。簡単なようでセンスが問われる、奥の深い作業なんです」(博次さん)
得意分野の異なる2人が二人三脚で手がける包丁は、「これぞ、堺包丁」といった硬派な趣。凛とした存在感の中に、どこか人情のような温もりも感じます。
「機械では出せない手づくりの味わいを、ぜひ感じていただきたいです。長く気持ちよく包丁が使えれば、料理も楽しくなっておいしい笑顔が増えますよね。私たちの包丁を通して皆さんがハッピーになってもらえたら、こんなにやりがいのあることはありません!」(隆行さん)
取材・文/土屋朋代 撮影/佐藤裕