
虹が揺れる宙吹きグラス ノスタルジックな肥前びーどろ
創業明治36年の副島硝子工業は、佐賀県佐賀市にて“肥前びーどろ”と呼ばれる、宙吹きガラスの伝統工芸品を製作している工房です。江戸末期から始まった肥前びーどろの歴史は160年と深く、現在では副島硝子工業が日本で唯一、当時からの技術を継承している工房となっています。佐賀市の重要無形文化財に指定されている肥前びーどろの代表的な商品には「肥前かんびん」や「長崎ちろり」といったものがありますが、今回ご紹介するのは別のもの。その可愛らしい色かたちから、女性の人気が特に高い「虹色しずく型グラス」をご紹介します。

宙吹きの技
肥前びーどろは、宙吹きという技法で作られています。
宙吹きとは、竿の先にガラスの原料を巻き付けて膨らまして成形する技法のことです。
型を一切使わずに、竿を使って宙でガラスを成形することで、同じものはひとつとないグラスができあがります。高度な技術が必要とされる技法です。
虹色しずく型グラスでは使われていませんが、副島硝子工芸は日本で唯一の伝統技法「ジャッパン吹き」を継承する工房でもあります。「ジャッパン吹き」の特徴は、巻き取る竿が鉄製のものではなく、ガラス製の友竿だということ。しかも2本の竿を同時につかう二刀流。
ガラスの竿を使用することで、ガラスが空気以外のものに触れることなく成形されるので、よりなめらかな手触りの表面に仕上がり、高品位なグラスが出来上がります。
高度な技術が必要なこの伝統技法で製作しているのは、残念ながら今や副島硝子工業所だけ。唯一無二の技術です。
ここが可愛い!虹色グラス
肥前びーどろのもつなめらかな風合いと虹色の光。
虹色しずく型グラスは、とっても可愛らしいグラスです。「赤・黄色・青・紫・水色」の5色のガラスで表現された虹。女性の手に収まるサイズ感と、コロンとしたフォルム。手作りによる温もりのある風合い。表面の凸凹は、虹の揺らめきをさらに表情豊かにしてくれています。底面にあえて入れられている気泡は、特に可愛らしいと評判。
陽の光によって映し出される虹の彩光は、何時間でも眺めていられそうです。

虹色グラスと日常
夏の暑い日に虹色グラスでキンキンに冷えた麦茶を飲み干せば、陽射しに揺れる虹と表面に付いた流れ落ちる水滴が、心も体も潤してくれます。夕暮れ時にサイダーを注いで飲めば、柔らかな虹越しにシュワシュワと炭酸が弾けて、なんだか少しノスタルジックな気持ちに。しずく型の虹色グラスに、ワインや果実酒の香りを閉じ込めて虹とお酒の色合いを眺める。会話も弾む愉しい夜のひととき。
虹色グラスによって生まれる情景は、何気ない日常にささやかな彩りを添えてくれます。

肥前びーどろの贈り物
元々は職人さん自身の結婚式の引出物として作られた非売品。それが虹色シリーズのグラスです。大事な人への感謝を込めた贈り物は、当然のことながら大好評。引出物だけで終わらせておくのは惜しいということで、肥前びーどろのラインナップに追加されたといいます。ぜひ、大事な人へ可愛らしい虹を贈ってみてはいかがでしょうか。黒いシンプルな箱の佐賀市重要無形文化財指定の印字からは、肥前びーどろの歴史の深さが感じられ、格調高い贈り物として喜ばれるでしょう。

グラスのお手入れ
大事なグラスは、ずっとその美しさを保っていたいですよね。
陶器や鉄器のような特別なお手入れは必要ありませんが、少し気を付けるだけで、ガラスがもつ透明感や輝きを持続させることが出来ます。
・洗い方
ガラス製品は繊細。小さな衝撃でも破損してしまうことがあるので、手元の装飾品には十分気を付けましょう。洗剤は中性洗剤で大丈夫ですが、いつも使っているスポンジとは別に、グラス用の柔らかい素材を用意して洗うのがオススメ。細かい傷や油移りを避けることができて曇りを防止することができます。
また、肥前びーどろは急激な温度変化で割れてしまう恐れがあるので、乾燥機にはかけず、自然乾燥か柔らかい布で拭き上げましょう。
・曇りの解消
グラスを使っていると、いつの間にか曇ってしまうことがあります。
水道水に含まれているカルシウムが表面に付着していることが原因の場合が多いので、お酢やクエン酸をつかって取り除きましょう。お酢の場合は布などにつけてそのまま磨きます。クエン酸は、お水と混ぜてクエン酸水を作り、スプレーして磨きます。(お水に対して5%ほどの濃度)どちらも磨いた後は、お湯でしっかりすすぎましょう。
自分だけの虹色グラス
宙吹きの過程で5色の虹をまとって出来あがる虹色グラスは、職人さんがひとつひとつ手作りしています。型抜きではない、宙で作り上げられるなめらかな曲線と柔らかな表情。温もりを感じさせる手触り。虹色の配色も、表情豊かな表面の凸凹も一つとして同じものはありません。自分だけの虹色グラスです。ひとつひとつ違った虹を浮かべるグラスを選ぶ時間。美しい虹との出会いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
