原材料

棕櫚箒と江戸箒の最も大きな違いは、原材料です。棕櫚箒は、棕櫚の木の幹の皮を穂先の素材に使った和箒のこと。つまり棕櫚の木の樹皮をまとめて組み合わせて作っています。一方で、江戸箒はイネ科のホウキモロコシという草を編み上げて作る箒なので、棕櫚箒は樹皮、江戸箒は草という原材料に違いがあります。

穂先の長さ・厚さ

原材料が異なる棕櫚箒と江戸箒は、穂先の長さや厚さにも違いが出てきます。穂先の長さは棕櫚箒よりも江戸箒の方が1.5倍ほど長く作られており、その分全体の長さも江戸箒の方が長くなります。しかし、扱いやすいようにバランスが工夫されているので、不便に感じることはないでしょう。また、穂先の厚みは棕櫚箒の方が厚く作られています。これは、江戸箒は繊維が太くコシが強いため、少ない量でも穂先にバネのような柔らかい弾力が生まれますが、棕櫚箒は繊維が細いため、コシを出すのに繊維をたっぷり使い、毛束の密度を高くすることが必要なためです。

使用感

棕櫚箒は、原材料である棕櫚の樹皮の繊維が細くて柔らかいため、モップのように穂先を静かに床に当て、優しく床をなでるように使います。掃き出すというよりは、力を入れずにゴミや埃を集めるといった感覚です。一方で、素材の草のしなりやコシが特徴の江戸箒は、座敷やフローリングを傷つけることのない適度な硬さで、しっかりとゴミを掃き出す感覚を味わえます。

使用年数

棕櫚箒は、適切なタイミングで修理をしながら大切に使うと、本鬼毛箒で15～20年以上、鬼毛箒（タイシ箒）で15～20年程度もつといわれています。棕櫚の皮箒は皮の品質と箒の作りによって大きく差があり、山本勝之助商店の「特選」で10～13年前後、「上」の品質で5～8年ほど使うことができると考えられます。江戸箒は、やせた穂先を切りそろえてまた使うという手入れを繰り返し、室内掃きから玄関や外掃きにおろして使うことも含めると、おおむね10年程度使用することができます。もちろん、いずれも使用頻度や保管状況にもよりますので、さらに長持ちする場合もあります。

メンテナンス

いずれも使用していないとき床に置きっぱなしにせず、吊るして保管しておくだけで日々のメンテナンスはほとんど不要になります。エアコンの近くや乾燥する場所に置くと、竹の柄が割れたり、穂先が広がる事がありますので、乾燥を感じたら霧吹きで水を吹きかけてください。また、掃きグセがついてしまったときは、どちらも水をたっぷり吸収させてからクセを直して十分乾燥させることで、大体の掃きグセを取ることができます。特徴的なお手入れとして、棕櫚箒は繊維が細かく、綿埃や細かいボミが穂先にまとわりつきやすいので、手や軽く濡らした雑巾などで取り除くようにします。また江戸箒は、穂先が摩耗してやせ細ってしまった場合、手持ちのハサミで切りそろえるとまた良好な状態で使用することができます。

棕櫚箒はこんな人におすすめ

質の高い箒を大切に長く使いたい方におすすめなのは、棕櫚箒。素材である棕櫚の木の皮は耐久性が非常に高く、本鬼毛箒もしくは鬼毛箒であれば、修理をしながら10年、20年と使い続けることができます。さらに、長い期間使うほどフローリングにほどよいツヤ感が現れるなど、使い続けただけその経年変化を楽しむことができます。また、柔らかい穂先で静かにゴミや埃を引き寄せるので、フローリングや畳との相性がいいのも特徴。10年単位で長く箒を使いたい方、フローリングや畳の掃き掃除に使いたい方には、棕櫚箒がぴったりです。

江戸箒はこんな人におすすめ

江戸箒は使う場所を選ばずオールラウンドに使用できるので、初めての箒選びにおすすめです。長めの作りで扱いやすく、気になったときにさっと手に取りゴミを掃くことができます。また、棕櫚箒と異なり穂先から粉が出ないので、誰にでも使いやすい箒です。素材のホウキモロコシは植物性繊維なので、静電気で穂先にゴミや埃がまとわりつくことがなく、ペットの毛の処理などにストレスなく使えるのも魅力。生活に初めて箒を取り入れてみようと考えている方、飼っているペットの毛の処理に困っている方は江戸箒を選んでみてはいかがでしょうか。