滋賀の地に根付いた和ろうそく
「大與(だいよ)」は、滋賀県高島郡(現高島市)今津町にある、和ろうそくの専門店です。
滋賀県は、古くは港町として栄えた町。そして、人口に対して日本一お寺が多い県ともいわれています。そのため、仏事や茶事などの場面で、大與の和ろうそくも多く使用されてきました。伝統と技を引き継ぎながら、四代にもわたり和ろうそくを作り続け、1984年には滋賀県の伝統工芸品に指定されています。
大與の創業は、大正3年。創始者の大西與一郎氏が、大阪の和ろうそく屋に丁稚奉公に行き、ふるさとである滋賀県今津町に戻って店を開いたのがはじまりでした。以来、和ろうそく一筋で100年以上。素材と技法にこだわった、最高品質の製品を作り続けています。お仏壇用や贈答用はもちろん、お部屋で普段使いできる和ろうそくもあり、多くのお客様に愛されています。
こだわりの100%単一植物蝋と、
職人が感性を研ぎ澄まして行う「手掛け」
大與の和ろうそくのこだわりは、100%単一植物蝋を原料としていること。なかでも櫨(はぜ)ろうそくで使われている櫨(はぜ)は日本でしか採取できず、大変希少性が高い高価な原料です。それでも大與では、櫨100%にこだわってきました。
和ろうそくの製造には、さらに「手掛け」とよばれる製造技法を用います。「手掛け」とは、芯の周りに素手ですくった蝋を塗り重ねて乾かし、また蝋を重ねては乾かすことを繰り返す技法。
この技法で作られた和ろうそくの断面を見ると、芯の周りを囲むように、幾重もの蝋の層でできているのがわかります。一層一層が、職人の手作業で塗り重ねられている証です。
「手掛け」は、一見、単純な作業に見えますが、とても繊細で経験と訓練が必要な作業。塗り重ねようとしている蝋の温度や外気温、ろうそく本体の温度や形を腕で感じながら、調節していかなければならないからです。その配慮は、自分の体調や精神状態にまで及ぶといわれています。
大與では、この「手掛け」ができることが、和ろうそく職人としての最低条件。その技術の習得には、なんと10年の歳月が必要だともいわれています。10回の季節の移ろいを経験し、様々に変化する状況に対応する技術を身に着けて初めて、一人前と認められるのです。
和ろうそくのあかりがある暮らしを、もう一度
火と人の間に寄り添うように灯る、和ろうそくの炎。その炎がもたらす安心感と魅力を伝えられるよう願いを込めて、大與は和ろうそくを作り続けています。
闇を照らして人をあたためてくれる「火」という存在は、太古の昔には、もっと人の暮らしに寄り添ったものでした。そのやさしさとあたたかさを、現代に暮らす私たちにも教えてくれます。